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不育症に関する疑問にお答えします。

Q10 不育症の原因は何ですか?
A10 妊娠初期の流産の大部分は胎児(受精卵)の偶発的な染色体異常が原因で、両親のリスク因子が原因になっている場合は少ないとされています。そのため、1回の流産でリスク因子を調べる必要はありません。
2回~3回以上流産を繰り返す場合は、両親のどちらかにリスク因子がある場合があるので、検査をお勧めします。
1回の流産でも妊娠10週以降の場合では、母体の要因が大きくなってくるとされていますので、検査をする意義はあると考えられます。
夫婦の染色体異常に加えて、妻側の要因としては、子宮形態異常、内分泌異常(甲状腺機能異常)、凝固異常など種々の要因があります。
厚生労働科学研究班(齋藤班)(2008~2010年)、日本医療研究開発機構(AMED)(齋藤班)(2016~2018年)では、詳しく調べてもリスク因子が分からない場合が64~65%ほどありました。その多くは、偶発的な胎児の染色体異常を繰り返しただけと考えられています。
その他の要因として高年齢があります。35歳以上になると流産率が増加し、40歳以上では40~50%の流産率となります。喫煙、過度のアルコール摂取、過度のカフェイン摂取も流産のリスクとなるので、制限して下さい。また肥満も流産のリスクとなるため、適正な体重管理も必要です。
Q11 不育症のリスク因子の検査にはどのようなものがありますか?
A11 流産、死産を2回以上繰り返す場合には、不育症のリスク因子の検査が勧められます。
血液検査により、夫婦それぞれの染色体の検査、糖尿病や、甲状腺機能などのホルモン検査、凝固因子検査(血を固める働きをみる)、抗リン脂質抗体測定などを行うこともあります。子宮の形の異常を調べるために超音波検査を行います。必要に応じてMRI検査などを追加して行う場合もあります。
リスク因子の有無を調べることにより、次回の妊娠に役立てることができます。
Q12 不育症の治療にはどのようなものがありますか?
A12 不育症イメージ画像不育症イメージ画像検査で見つかったリスク因子について治療を行います。
内科疾患や甲状腺ホルモン分泌異常が見つかった場合にはその治療を行います。第XII因子欠乏症やプロテインS欠乏症や抗リン脂質抗体症候群では、抗血栓療法(アスピリン内服やヘパリン注射)を行う場合もあります。リスク因子不明不育症に対しては、積極的な治療をしない経過観察で比較的良好な結果が得られています。
治療した症例、経過観察の症例をふくめて、不育症外来を受診した方は、最終的に約70%以上が出産に至ると報告されています。
Q13 流産をくり返してから、気分が落ち込んで外出もできなくなりました。仕事もずっと休んでいます。どうすれば良いでしょうか?
A13 まずは、今の気持ちを書き出してみましょう。また泣くのを我慢する必要はありません。御主人や家族の方に正直に今の気持ちを伝えて下さい。職場の方にも、勇気を持って事情を話すことは、時には必要です。
このようなことをしても、解決できない場合、担当の産婦人科を受診し、症状を説明し、対応を御相談下さい。重度なうつの場合、精神科や心療内科への紹介等が必要になる場合があります。このような場合、担当の産婦人科医とよく相談して下さい。
ホームページに動画配信サイトがありますので、見て下さい。
Q14 流産・死産したことを、いつまでも忘れずにいます。夫は流産・死産直後は、同じように悲しんでいましたが、今では流産・死産のことを忘れたようで、そのことが許せません。
A14 女性は流産をした場合、自分の子宮から赤ちゃん(胎芽)が出たという実感があり、長い間忘れることができません。一方、男性はそのような感覚がないため、このような感情の乖離が起こってしまいます。
ご夫婦で相談に来ていただくなどして、女性の気持ちをはっきりと伝えていただくことで、男性側も女性の気持ちを理解できるようになります。不育症をお二人で共有していただき、お二人の意志で不育症治療についても相談していただければと思います。
Q15 2回流産を繰り返したので、次の妊娠が恐くなってずっと避妊しています。なかなか、次の妊娠に臨めないのですが、年齢も35歳になり、どうすれば良いのか悩んでいます。
A15 不育症イメージ画像不育症の方の多くは、偶然胎児染色体異常をくり返した偶発的流産です。リスク因子にもよりますが、不育症の方でも最終的には80%以上の方が出産することができます。
ただし、年齢が上がるにつれて、流産率は増加しますので、早めに産婦人科医を受診し、まずは検査をされてはいかがでしょうか。
Q16 子供が欲しくて、薬局で買った妊娠診断薬で頻回に検査していますが、陽性だったので産婦人科医を受診したところ、子宮の中に赤ちゃんの袋が確認できず、初期の流産だといわれました。このようなことが2回続いていますが、私は不育症でしょうか?
A16 妊娠検査薬の感度が上がったため、子宮の中に赤ちゃんの袋が見える前に検査で陽性となり、その後、月経が来てしまい、赤ちゃんの袋が見えないケースが経験されるようになりました。このような場合を生化学的妊娠と呼びます。
以前は化学流産と呼んでいましたが、何の異常もない健康なカップルでも30%~40%と高率に起こっていることが判り、生化学的妊娠と呼ばれるようになりました。
不育症は2回以上の流産(子宮の中に赤ちゃんの袋が見えてからの流産)とされていますので、生化学的妊娠をされたからといって検査や治療を受ける必要は現時点ではありません。あまり神経質にならず、次回の妊娠に臨まれることをお勧めします。
ただし、欧州生殖医学会では2017年に生化学的妊娠を流産回数に含めるとしました。今のところ、日本、アメリカでは生化学妊娠は流産としていません。今後、繰り返す生化学的妊娠をどのように取り扱うかについて検討していく必要があります。
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