不育症でお悩みの方 不育症とは 不育症のリスク因子(検査異常) 流産回数との関係 治療成績 研究班からの提言 ヘパリンカルシウム在宅自己注射のお知らせ 不育症Q&A 研究者リンク 治験(臨床試験)のお知らせ 不妊症治療の助成について 研究者の方 代表者のごあいさつ 研究班員の紹介 不育症研究について 研究報告

不育症の皆様へ

不育症に認められるのか?抗PE抗体陽性者は対象となるのか?など、不育症に限って解説いたします。

Ⅰ. 適応基準

血栓性素因(先天性アンチトロンビン欠乏症、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症、抗リン脂質抗体症候群など)を有する患者が、不育症例の一部に該当いたします。このうち抗リン脂質抗体症候群は、抗カルジオリピン(CL)β2GPI複合体抗体、抗CLIgG抗体、抗CLIgM抗体、ループスアンチコアグラント抗体検査のうち、いずれか一つ以上が陽性で、12週間以上の間隔をあけても陽性の場合です。再検して陰転化した場合はアスピリンが適応となり、ヘパリンの適応とはなりません。
 また、現在のところ抗PE抗体、抗PS抗体陽性者は、抗リン脂質抗体陽性者には含めません。これは、まだ抗PE抗体陽性者や抗PS抗体陽性者にヘパリンを投与した方が流産率が減少するというデータが少ないからです。そのため国際的基準に、抗PE抗体や抗PS抗体は入っていません。

Ⅱ. 不育症例のどのくらいの人が対象になるのか

厚生労働省研究班のデータでは、抗リン脂質抗体陽性が10.2%(54/527)ですが、再検しても陽性である方は88%(24/27)でした。そのため不育症例の約9%がヘパリン在宅自己注射の適応となります。その他、プロテインS欠乏症が7.4%、プロテインC欠乏症も0.2%存在します。妊娠時には血栓症のリスクが高まりますので、これらの症例で血栓症のリスクが高いと判断された方が在宅ヘパリン自己注射の適応となります。
 なお、第XII因子欠乏症はヘパリンの保険適応とはなっていないことに注意して下さい。
 今回の保険病名に「不育症」は入っていません。これは不育症というだけで安易にヘパリンカルシウムの在宅自己注射を行なうことを防ぐためです。しかし不育症例のうち、抗リン脂質抗体陽性例や先天性アンチトロンビン欠乏症、プロテインS欠乏症、プロテインC欠乏症など、血栓症リスクの高い方が適応症例となります。

Ⅲ. 不育症の方々へ

ヘパリンカルシウムの在宅自己注射が不育症の一部の患者に保険適応されたことの意義は極めて大きく、これまで1日2回外来受診されていた患者さん方にとっては、とても大きな朗報です。とても嬉しく思います。
 教育入院もしくは外来での教育プログラムを受けた後に、在宅自己注射を行って下さい。注意事項を守り、何らかの異常があれば直ちに医療機関に連絡して下さい。

Ⅳ. 参考資料

少し専門的ですが、参考資料を添付しますので参考にして下さい。
>>参考資料はこちらからご覧ください。