谷村　憲司　（准教授）

谷村　憲司

山田　秀人	出口　雅士
谷村　憲司	笹川　勇樹

　私は、2012年に大阪大学微生物病研究所免疫化学分野（代表者：荒瀬　尚教授）に国内留学した際に、脳梗塞などの血栓症だけでなく、不育症や妊娠高血圧症候群、胎児発育不全などといった妊娠中の病気を引き起こす原因となる抗リン脂質抗体症候群という病気に関わる新しい自己抗体（ネオ・セルフ抗体）の研究に携わりました。
　そして、2020年には、ネオ・セルフ抗体が不育症の主な原因の一つである可能性、特に現存の検査方法では原因が分からない不育症に関わっている可能性を明らかにし、論文発表しました。
　現在も不育症研究で中心的な日本全国の研究施設と協力し、ネオ・セルフ抗体が関係する不育症の治療法を見つけ出すための研究を行っています。私たちの研究成果が不育症でお悩みの方々にお役に立つことを願いつつ、日々、臨床や研究に努めています。

福井　淳史（准教授・研究開発分担者）

福井　淳史

　兵庫医科大学病院産科婦人科および生殖医療センターでは不妊症治療および不育症治療を行っており、不育症の患者さんに対しても妊娠成立前から安心して妊娠して頂けることを心がけた診療を行っております。また不育症診療に関しましては、米国有数の不育症診療施設であるRosalind Franklin University / The Chicago Medical Schoolにおいて不育症の診断・治療法を学んだスタッフが対応しています。不育症治療は妊娠前の治療および妊娠成立後の治療の双方が必要になります。私どもは妊娠が成立する前から治療としてヘパリン療法およびアスピリン療法を行っており、本治療法により私どもの施設では90％以上の方が妊娠の継続あるいは生児獲得をされております（染色体異常により再び流産となった症例を除きます）。
　兵庫医科大学病院産科婦人科・生殖医療センター不育症外来の特徴としてあげられることは、不育症の原因を免疫学の視点から研究して臨床応用していることです。私どもは1997（平成9年）から子宮および末梢血に存在する免疫担当細胞であるNK（ナチュラルキラー）細胞という細胞に着目し診療・研究を行ってまいりました。これまでの研究結果から、免疫異常を有する患者さんを特定することにより、特殊な薬物療法（γグロブリン療法、イントラリピッド療法）を行うことで良好な成績が得られることが明らかになってきました。私どもの研究や不育症患者さんへの取り組みが少しでも皆様の役に立ち一人でも多くの患者さんに子宝が授かることが私たちスタッフ一同の願いであり喜びでもあります。
　なお兵庫医科大学・生殖医療センター外来は月曜日から金曜日の午前・午後、第１・第３土曜日の午前に開設されております。なかでも不育症外来は主に火曜日、木曜日の午後に開設しています。