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富山大学大学院医学薬学研究部 産科婦人科

齋藤 滋(教授・研究開発代表者)
島 友子(助教)
鮫島 梓(助教)
津田さやか(医員)
小野 洋輔(医員)
森田 恵子(医員)

 北陸で唯一の不育症外来を開設(月、金)しており、不育症の治療を行なっています。教授の齋藤 滋は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)委託事業の「不育症の原因解明、予防治療に関する研究」の代表研究者で、班員と協力して不育症に関わる基礎的、臨床的研究を行なっています。

  1. 免疫学的立場からみた不育症
     NK活性が高値の症例を少量のプレドニン療法もしくは漢方療法との併用で治療して、良好な成績を得ています。その他、制御性T細胞の研究も行なっています。免疫異常で起こる流産についての臨床的、基礎的研究を継続的に行なっており、その成果が出つつあります。

  2. 抗リン脂質抗体と不育症との関連
     従来行われていたループスアンチコアグラント(LA)、抗カルジオリピンIgG、IgM、抗β2GPI複合体抗体に加えて、抗PS/PT IgG、IgM、神戸大学との共同研究で抗β2GPI/DR7抗体を測定しています。これまでリスク因子不明であった方の10%以上が陽性となっています。そのため、適切な治療を行なえるようになりました。

  3. リスク因子を検索した上で、最適な治療法を実践
     十分なリスクを評価した上で治療を行なうと(リスクのない方には、カウンセリングやテンダーラビング療法のみ)、胎児染色体異常の流産を除いた例での生児獲得率(成功率)は90%となっています。このため、リスクのない方には、アスピリンやヘパリン等は必要ない事が判りました。

  4. 4回以上の流産を繰り返し、うち1回以上の胎児染色体正常例に対する大量免疫グロブリン療法の臨床治験
     42歳未満で4回以上の流産(うち1回以上の胎児染色体正常流産)の既往がある方に対して、大量免疫グロブリン療法の臨床治験を行なっています。この臨床治験で有効性が認められれば、将来、保険適用される事になります。

  5. SLE、リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)合併妊娠
     SLE、RA、IBDは女性に罹患することが多く、種々の薬剤を使用しているため、妊娠を躊躇する方も多いですが、適切な管理をすれば流産をせずに出産できる事が判ってきました。これら難治性疾患の方が、妊娠、出産できるように指導しています。(齋藤 滋は、平成28-29年度 厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業))「関節リウマチ(RA)や炎症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針の作成」の研究代表者です。)

神戸大学大学院医学研究科産科婦人科学分野

山田秀人(教授・研究開発分担者)
出口雅士(特命教授、神戸大学地域医療ネットワーク学分野)
谷村憲司(講師)
笹川勇樹(助教)

 難治性の不育症/習慣流産女性に福音をもたらすために、病因病態のさらなる解明と有効な新治療法の確立を目指しながら、以下の基礎および臨床研究を近年展開しています。

  1. 染色体正常胎児の流産の原因となる母児間接点の免疫学的異常(NK細胞, T-reg, B-reg, Macrophage, DC, Th1Th2など)の解明を目指します。母体血のNK細胞高活性や脱落膜のM1 macrophageが染色体正常流産の原因に関与することを明らかにしました(JRI,AJRI 2017)。
  2. SLE妊娠の産科異常リスクを解明し、管理治療法の確立に結びつけます(JRI 2017)。
  3. 抗リン脂質抗体症候群(APS)の産科異常リスクの解明と治療指針を作成しました(JRI 2017, 診療ガイドライン 2016)。
  4. 我々のグループが新発見したネオセルフ抗体である、抗β2GPI/HR-DR7抗体の測定方法を標準化し、管理治療法の確立を目指します(PNAS USA 2014, Blood 2015)。
  5. アスピリンヘパリン治療抵抗性のAPS妊娠に対して、大量免疫グロブリン療法の臨床研究を行っています(RMB 2017)。
  6. 重症の原因不明習慣流産に対して、大量免疫グロブリン療法の有効性を証明するために臨床治験を主導し行っています(GB-0998二重盲検比較試験)。

東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科

藤井知行(教授・研究開発分担者)
永松 健(准教授)

不育症女性のメンタルストレスと免疫機能調節異常についての研究:

繰り返す流産は女性に大きな心理的ストレスを与えます。動物実験で精神的なストレスは免疫調節因子を変化させて流産率の増加することが知られています。本研究では、不育症女性のメンタルストレスを解析し、それを反映するバイオマーカーの探索を行います。また、カウンセリングに伴うメンタルストレスの緩和とその後の妊娠における影響を調べます。

多価不飽和脂肪酸摂取バランスと流産発生に関する検討:

食事に含まれる多価不飽和脂肪酸(PUFA)の中でオメガ6とオメガ3脂肪酸の摂取バランスは様々な疾患と関係しています。PUFAバランスと不育症の関係は不明ですが、近年の食生活の変化によりオメガ6優位な食事バランスの方が増えているとされ、それが妊娠に対してマイナスの影響を与えているかもしれません。本研究では不育症女性のPUFA摂取バランスと妊娠の関係について調べます。

岡山大学病院 不育症外来

岡山大学大学院保健学研究科 教授
岡山大学生殖補助医療技術教育研究(ART)センター 教授
岡山県不妊専門相談センター「不妊・不育とこころの相談室」 センター長
中塚幹也(教授・研究開発分担者)

1)不育症カップルへの精神的支援マニュアルの作成と有効性の検討

  1. 不育カップル向けのリーフレット「『流死産で大切な子どもを亡くしたあなたと家族へ』あなた・家族・周りの人々が前に進むためにできること」(岡山県不妊専門相談センターHPからダウンロードも可能).
  2. 流死産時のグリーフケア,その後の妊娠中のTender Loving Care(TLC)に関して,ガイドブック「産科スタッフは知っておきたい『流死産・不育症女性とその夫へのグリーフケアとサポート』」(岡山県不妊専門相談センター,2017).
  3. 医療スタッフへの啓発用DVD「心理の専門家ではないスタッフのための『不育症カップルへのテンダー・ラビング・ケアTLC(Tender Loving Care)実践の手引き』(Fuiku-Labo HPで配信中).

2)不育症女性における自律神経活動の解析

3)不育症女性における血管障害:原因不明不育症女性におけるリスク因子

日本医科大学産婦人科

竹下俊行(教授・研究開発分担者)
桑原慶充(准教授)
根岸靖幸(日本医科大学微生物学・免疫学、助教)

  1. 流産のリスク因子の基礎的、臨床的研究−血清学的陰性APSの新規抗体同定)

不育症のリスク因子の中でも、抗リン脂質抗体症候群は頻度も高く重要な疾患です。不育症の患者さんで、既往流産回数や流産の時期(10週以降)から抗リン脂質抗体症候群が強く疑われるが、抗リン脂質抗体が検出されない方がいます。こうした患者さんの血清中から未知の抗体を検出するのが本研究の目的です。これまでに、補体第9成分(C9)に対する新規抗体が候補として見つかってきました。

  1. 子宮奇形の流産原因の解明(基礎的、臨床的)

子宮奇形は不育症の原因となり、特に中隔子宮が不育症と深い関連があると言われています。中隔子宮の手術療法として最近では子宮鏡下中隔切除術が一般的になっています。新しい子宮鏡下中隔切除術術式の有用性を検証するのが本研究の目的です。同時に中隔子宮でなぜ流産が多いのかを、免疫学的に解明するのがもう一つの目的です。

  1. 甲状腺機能異常と不育症の関連

甲状腺機能異常は不育症のリスク因子といわれています。特に最近では甲状腺刺激ホルモン(TSH)の高値が、妊孕性に様々な影響を及ぼす可能性が指摘されていますが、不育症におけるTSH高値の意義は確立されていません。甲状腺専門医の意見も聞きながら、甲状腺機能異常と不育症の関連を調べています。

兵庫医科大学医学部産科婦人科

福井 淳史(講師・研究開発分担者)

 私どもは、1997(平成9年)から子宮および末梢血に存在する免疫担当細胞であるNK(ナチュラルキラー)細胞という細胞に着目し診療・研究を行ってまいりました。NK細胞は妊娠の成立や維持に必須の細胞であり、妊娠成立時には子宮に存在する免疫担当細胞の70%以上を占めております。私どもはこれまでに、NK細胞の異常が流産、着床不全や妊娠高血圧症候群などを引き起こすこと、不育症患者さんや着床不全の患者さんにはNK細胞の機能異常が認められること、またNK細胞の適正化を目的とした治療が不育症や着床不全に対する治療となる可能性があることなどを報告してまいりました。そして、これらの研究結果から、免疫異常を有する患者さんを特定することにより、特殊な薬物療法(ダナゾール療法、GnRHアゴニスト療法、γグロブリン療法、イントラリピッド療法)を行うことで良好な成績が得られることを明らかにしています。

杉ウイメンズクリニック不育症研究所

東海大学医学部
杉 俊隆(院長、客員教授・研究開発分担者)

 当院は、習慣流産、反復流産、子宮内胎児死亡、着床障害などを経験された方を対象に、不育症の最先端の検査、治療を行うクリニックです。常に最先端の医療を提供できるよう、不育症研究所も併設しております。

 当研究所の得意分野は、自己抗体を介した不育症の新しい原因を発見することです。例えば、私が発見した「キニノーゲンを認識する抗PE抗体」は、血液凝固系因子であるキニノーゲンを認識する事により、胎盤に血栓を生じ、流産を引き起こすと考えられます。さらに、第XII因子やプロテインSに対する自己抗体も発見しました。これらの自己抗体が、それぞれのタンパク質のどの部分を認識するのか、エピトープのマッピングも行い、抗体の病原性を明らかにして、治療方法を開発して来ました。不育症の多くは、今では原因不明の難病ではありません。今後も不育症の新しい原因究明に頑張りたいと思います。

国立成育医療研究センター研究所

周産期病態研究部
秦健一郎 (部長・研究開発分担者)

 生殖細胞そして胎児と胎盤が発生する過程、あるいは病気となる原因を、分子生物学的手法に加え、分子遺伝学的手法も取り入れ解析を進めています。

 本研究班では特に、分子遺伝学的手法の中でも、ゲノム解析・エピゲノム解析を中心とした研究を行っています。様々な検査を行ってもはっきりした原因がわからない症例の一部を調べると(ゲノム解析を行うと)、これまで気づかれていなかった小さな遺伝子の変化が見つかることがあります。あるいは遺伝子が正常であっても、その調節機構を調べると(エピゲノム解析を行うと)、胎盤や胎児の発育に関わる変化が見つかることがあります。これらの背景を踏まえ、本研究班で様々な分野の専門家の先生方と協力し、新しい検査法開発や不育症の原因解明を目指します。

藤田保健衛生大学・総合医科学研究所・分子遺伝学研究部門

藤田保健衛生大学病院・遺伝カウンセリング室
倉橋浩樹(教授、室長・研究開発分担者)

 不育症は、複数の遺伝因子と複数の環境因子が発症に関わっている多因子遺伝疾患と考えられています。このような多因子遺伝病には、ゲノム解析により、個々の患者様のリスク因子を同定することにより、患者様固有の原因に基づいた、より効果的な治療法の選択を行うことが可能となるという、個別化医療を目指した研究が精力的に行われています。近年は、次世代シーケンサーによって網羅的に得られた全エクソーム、全ゲノム配列に由来するビッグデータのバイオインフォマティクス解析を利用することにより、一度に数多くの遺伝因子を同時に同定することが可能となり、個別化医療に寄り近づくことができ、「プレシジョン・メディシン(精密医療)」と呼ばれています。わたしたちは、不育症の精密医療を目指して、大規模なゲノム解析を行っています。

富山大学医学部公衆衛生学講座

エコチル調査富山ユニットセンター
稲寺秀邦 (教授・研究開発分担者)

エコチル調査の取り組み

子どもを授かることは大きな喜びです。生まれた子どもは元気に成長してほしいと誰もが願っています。そのためには、子どもの健康や成長に影響を与える環境要因を明らかにし、悪い影響を及ぼす要因を取り除くことが必要です。

私たちは現在「エコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)」に取り組んでいます。「エコロジー」と「チルドレン」を組み合わせて「エコチル調査」です。2011年より3年間で全国10万人の妊婦さんにご協力いただき、生まれた子どもたちが13歳に成長するまでフォローしています。エコチル調査は特に妊娠期や出生後早い時期の環境要因が、子どもの成長や発達に及ぼす影響を明らかにすることを目的としています。エコチル調査の結果は環境省ホームページ等で公表しています。是非ご覧ください。